研究開発職における博士学位取得者の
採用とキャリアパスに関する調査
| 目的 |
本調査は、研究開発部門を有する全国の上場・非上場企業を対象とし、博士号取得者の採用状況や採用の際に求められるスキル、大学や学術機関との共同研究等の状況、研究開発プロジェクトの特徴とワークスタイル等を把握し、博士学位取得者のキャリアパス多様化に向けた産学連携の施策に有効な資料を提供することを目的とする。 |
| 調査方法 |
郵送調査法による送付・回収 |
| 調査期間 |
2007年3月1日~3月19日 |
| 標本数 |
2,100件 |
| 抽出方法 |
株式会社ダイヤモンド社のデータサービスD-VISONを利用、同社の会社情報ファイルから下記の条件を指定し、検索 |
| ファイル名 |
役員・管理職情報 |
| 会社区分 |
上場、非上場 |
| 小分類業種コード |
010100~080199, 082100~082199, 106100~106199, 108100~999999
- a, 上場企業 (水産・農林業、建設業、食料品、繊維製品、パルプ・紙、化学、医薬品、石油・石炭製品、ゴム製品、ガラス・土石製品、鉄鋼、非鉄金属、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器、その他製品、電気・ガス業、陸運業、海運業、空運業、倉庫・運輸関連業、情報・通信業、卸売業、小売業、銀行業、保険業、調査・コンサルタント・研究所、教育関連、その他サービス業)
- b, 非上場企業 (鉱業、建設業、食料品、繊維製品、パルプ・紙、科学、医薬品、石油・石炭製品、ゴム製品、ガラス・土石製品、鉄鋼、非鉄金属、金属部品、機械、電気機器、輸送用機器、精密機器、その他製品、電気・ガス業、陸運業、海運業、空運業、倉庫・運輸関連業、情報・通信業、卸売業、小売業、銀行業、保険業、調査・コンサルタント・研究所、その他サービス業)
|
| 従業員数 |
200人以上 |
| 勤務先住所コード |
01000000000~4799999Y999 (北海道~沖縄) |
| 肩書部門コード |
1100~1199 (研究技術開発部門~研究技術開発部門) |
| 肩書役職コード |
1101~1111, 1141~1141 (部門長格~部長格、研究所長格) |
回答数:212社(無効票除く。回収率:10.1%)
調査実施機関:早稲田大学ポスドク・キャリアセンター
調査結果
1.回答企業の属性
回収企業の属性を業種別にみると、機械・電気機械・輸送機械が最も多く31.1%、次いで建設業の16.0%、ゴム・化学・医薬の15.1%の順になっている。
また、経営規模別にみると、従業員数500人未満の企業が最も多く35.4%、次いで500人以上1,000人未満の企業21.2%の順になっている。
n=212
n=212
2.全体の分析結果
- 回答企業212社中、平成14年度から平成18年度にかけての5年間で、技術者として博士学位取得者を1人以上採用した実績を持つ企業は、86社(40.5%)となっている(次項(3)①)。
- 業種別にみると、ゴム・化学・医薬系や機械・電気機械・輸送機械系で、博士学位取得者を過去5年間で10人以上採用した実績を持つ企業が全体の1割を超えており、業種業界の別による採用実績の差が顕れている((3)②)。
- 技術者や研究開発従事者の採用における中途採用の割合は高いとはいえず、中途採用の比率は採用全体の20%以下である企業が回答企業の7割以上を占めている((1)①、(2)①)。業種別にみると、情報通信系企業は他の業種よりも比較的、中途採用の割合が高い((1)②(2)②)。
- 博士学位取得者の採用事例の内実をみると、国内大学の博士課程修了後新卒で採用されるケースが最も多い(採用事例全体の47.2%)。また、新卒採用の場合は、過去5年間の採用実績が10名を超える企業もみられるなど比較的活発に行われているが、ポスドクや海外大学での学位取得者の採用は、採用事例数や採用人数共、新卒者採用に比べて著しく低くなっている((4)①②)。
- 過去5年間の研究分野別の採用状況をみると、化学・ナノテク・材料分野、機械・製造技術分野、生命科学・バイオ分野、情報通信・ソフトウェア分野における実績が比較的高い((5)①)。
- 一方、今後の採用見込みについては、化学・ナノテク・材料分野、機械・製造技術分野、数値解析・制御技術分野に対して比較的採用意欲が高い((5)②)。
- 研究開発職を採用する場合の年齢制限の有無については、年齢制限を設けていないという回答が全体の76.4%を占めており、原則としては、年齢よりも人物本位・能力重視による採用評価が行われているものとみられる((6)①)。
- 企業が博士学位取得者の採用活動を行う際によく活用している媒体としては、大学等の研究室・研究指導者を通じたネットワークが最も多く、次いでインターネット、大学の就職課等となっている((7))。近年の社会一般の情報化の進展と比較して、民間企業と博士学位取得者の交流機会は質量共に限定的であるといえる。
- 博士学位取得者の採用に至った理由については、「求めていた専門知識や技術スキルを有していることが期待できたため」が最も多く(36.6%)、次に「研究テーマやアプローチが一致したため」(21.0%)、「論文や学会発表の実績があり、優れた研究能力が期待できたため」(16.1%)が続く。すなわち、博士学位取得者の採用に際しては、それまでの実績や研究能力が主な評価要因となっているといえる((8))。
- 一方、博士学位取得者の採用を検討しながら採用に至らなかった理由としては、「応募者の性格等から自社の社風にはあわないと判断したため」という回答が最も多く、応募者の研究実績や能力に不採用の原因を帰する回答よりも多い((9))。このことは、書類選考で研究実績や能力が評価されても、面接でコミュニケーション能力やビジネスマナーの著しい欠如が認められた場合、民間企業への採用には至らないことを示しているといえる。
- 博士学位取得者に期待するスキルとしては、「マーケティング感覚や社会的ニーズに敏感であるかどうか」が最も高い(50.0%)。一方、それまでの研究実績を踏まえたスキル(たとえば「専門分野での論文実績があるなどの優れた研究があるかどうか」)への期待については回答率がいずれも1割以下となっている((10)②)。マーケティング関連のスキルへの期待が他のスキルに比べて著しく高いことは慎重な評価を要すると思われるが、注目すべきは、この博士学位取得者に期待するスキル内容が、博士学位取得者を除く研究開発従事者(学部・修士卒)に期待するスキルの内容と比べてほとんど差が出ていないことである。例えば、博士学位取得者に対して、専門分野での研究能力やプロジェクト管理能力などへの期待値が比較的伸びていない((10)①②)。すなわち、産業界においては、博士学位取得者の学部卒者、修士卒者に対する能力面での優位性が明確にイメージされていないものといえ、このことが博士学位取得者の採用が活性化しない大きな要因のひとつになっていると考えられる。
- 研究開発職における人事制度については、技術系が企業内の専門職としてキャリアを積むことを支持する制度は比較的よく整備されているものの、社外の研究活動の実績を人事評価に活かしたり、技術系職員からマネジメント層を育成する制度を整備している企業は多くない(11)。このこともまた、修士卒者に比べて高度化した研究内容に触れていて、プロジェクト遂行において豊富な経験を持つ博士学位取得者の能力を、民間企業が十分に評価できない遠因になっているものと思われる。
3.個別項目
(1)技術者数のうち中途採用者の比率
①全体
n=212
回答企業における技術者数のうち中途採用者の比率は、20%未満の企業が全体の73.1%を占めている。
②業種別
n=212
技術者のうちの中途採用の比率を業種別にみると、ゴム・化学・医薬系、食品・パルプ・その他製造業系、卸売・小売・サービス系で、中途採用の比率が採用全体の10%未満となっている企業が過半数を占めるのに対し、情報通信系では同比率が22.7%となっている等、業種による差がみられる。
(2)研究開発従事者数のうち中途採用者の比率
①全体
n=212
回答企業における研究開発従事者数のうち中途採用者の比率は、20%未満の企業が全体の74.1%を占めている。
②業種別
n=212
研究開発従事者のうちの中途採用の比率を業種別にみると、情報通信系を除き、全ての業種で中途採用の比率が採用全体の10%未満となる企業が過半数を占めている。
(3)過去5年間に採用された技術者全体のうちの博士学位取得者数
①全体
n=212
過去5年間(平成14年度~平成18年度)で技術者として博士学位取得者を採用した実績を持つ企業は、全体の40.5%(全212社中86社)となっている。
②業種別
n=212
過去5年間に採用された技術者全体のうちの博士学位取得者数を業種別にみると、採用が1人以下となっている企業がいずれの業種でも過半数を占めるが、一方で、ゴム・化学・医薬系や機械・電気機械・輸送機械系では10人以上採用している企業が全体の1割を超えている(10.6%)など、業種による差がみられる。
(4)博士学位取得者の採用事例
①採用事例の概要
n=127
過去5年間(平成14年度~平成18年度)の博士学位取得者の採用事例をみると、国内大学の博士課程を終了後新卒で入社した事例が最も多く、全体の47.2%を占めている。一方、博士学位取得後、学術機関等での勤務経験を有する者の採用は全体の25.2%となっている。
②博士学位取得者の採用事例の内訳
n=127
過去5年間における博士学位取得者の採用事例の内訳をみると、新卒採用の場合は採用実績が多様であるが、その他の採用事例(海外大学の学位取得者の新卒採用やポスドク採用)では採用人数1人の場合が採用事例の6割以上を占めている。
(5)博士学位取得者の分野別採用状況
①過去5年間の採用実績
過去5年間の研究分野別の採用状況をみると、化学・ナノテク・材料分野、機械・製造技術分野、生命科学・バイオ分野、情報通信・ソフトウェア分野における実績が全体に対して比較的高い。
②今後の採用見込み
今後の採用見込みについては、全研究分野で「現在の水準程度」という回答が多いが、「今後は増やしたい」という回答も、機械・製造技術分野、化学・ナノテク・材料分野、数値解析・制御技術分野に関して一定程度(分野別回答の1~2割)みられる。
(6)研究開発職を採用する場合の年齢制限の有無
n=212
研究開発職を採用する場合の年齢制限の有無については、年齢制限を設けていないという回答が全体の76.4%を占めている。
(7)博士学位取得者の採用活動を行う際に利用する媒体
企業が博士学位取得者の採用活動を行う際によく活用している媒体としては、大学等の研究室・研究指導者を通じたネットワークが最も多い(「よく活用している」が31.4%)。次にインターネット(同20.9%)、大学の就職課(キャリアセンター)が続く。
(8)博士学位取得者の採用に至った理由
n=372
博士学位取得者の採用に至った理由については、「求めていた専門知識や技術スキルを有していることが期待できたため」が最も多く(36.6%)、次に「研究テーマやアプローチが一致したため」(21.0%)、「論文や学会発表の実績があり、優れた研究能力が期待できたため」(16.1%)が続く。
(9)博士号取得者の採用を検討したにも関わらず採用に至らなかった理由
n=275
博士学位取得者の採用を検討したにも関わらず採用に至らなかった理由としては、「応募者の性格等から自社の社風にはあわないと判断したため」という回答が最も多く(25.5%)、研究内容に対する評価(「自社の研究開発に必要な知識や技術スキルが備わっていないだろうと判断したため」同22.5%、「テーマや研究手法が一致しなかったため」同20.7%)よりも多い。
(10)研究開発職の採用する際に期待するスキル
①研究開発職(学士・修士卒も含む)に期待するスキル
n=60
研究開発職(学士・修士卒を含む)に期待するスキルとしては、「マーケティング感覚や社会的ニーズに敏感であるかどうか」が最も高い(66.7%)。
②博士号取得者に期待するスキル
n=54
博士学位取得者に期待するスキルとしては、「マーケティング感覚や社会的ニーズに敏感であるかどうか」が最も高い(50.0%)。一方、それまでの研究実績を踏まえたスキル(たとえば「専門分野での論文実績があるなどの優れた研究があるかどうか」)の期待については回答率がいずれも1割以下となっている。
(11)研究開発職における人事制度
n=212
研究開発職における人事制度について「比較的一般的にある」と回答した企業が多かったのは、「資格・役職体系としてテクニカル・エキスパート制度や、主任研究員に代表される専門職の体系」(37.0%)、「スペシャリスト認定制度専門能力を人事評価・報酬に反省する制度」(25.0%)である。一方、専門職の昇格にあたって外部での実績を評価する制度を整備している企業は多くない(同11.3%)。
(12)博士学位取得者を対象とした就職説明会や、大学と民間企業の
研究者同士による意見交換会の開催について 関心の有無
n=212
博士学位取得者を対象とした就職説明会や、大学と民間企業の研究者同士による意見交換会の開開催についての関心の有無は企業により回答が割れた(「関心がある」47.6%、「関心がない44.3%」)。